1.はじめに
馬の食事は健康とパフォーマンスに大きな影響を与えます。
本記事では、馬の食事について探究し、どのような栄養が必要か、また、何を食べさせるべきか、避けるべきかについて記載します。
良いものと悪いものを見極め、馬の幸福と健康に貢献するための情報を提供します。
2.馬の食事
馬は、草食動物のため、牧草や乾草を食べます。
馬は胃が小さく、大量の食事をまとめて食べることが難しいため、1日のうち大半を草を食べて過ごします。
しかし、競走馬や乗用馬のように運動量が多く高いエネルギーが必要な場合、牧草や乾草だけでは十分な栄養が摂取できないため、タンパク質、炭水化物、脂肪、ミネラルなどの馬に必要な栄養素の含まれた餌を馬に与える必要があります。
3.馬の栄養
馬に必要な栄養成分は、「タンパク質」「炭水化物」「脂肪」「ミネラル」です。
3.1 タンパク質
馬にとっての「タンパク質」は、体の成長や筋肉の維持・修復に不可欠な栄養素です。主に牧草や乾草から摂取され、マメ科植物の一つであるアルファルファは特に高いタンパク質含有量を誇ります。また、馬の疲労回復にも寄与し、食事には大豆やおからなどタンパク質豊富な食材を混ぜて与えることがあります。
3.2 淡水化物
「炭水化物」は馬の主要なエネルギー源です。馬の大きな体を動かすためには多くのエネルギーが必要で、歩行や走行時に特に必要とされます。炭水化物は運動中に迅速にエネルギーに変換され、グリコーゲンとして筋肉に貯蔵されます。穀物やトウモロコシなどが炭水化物の供給源となりますが、摂取量には注意が必要で、食べ過ぎると消化不良のリスクがあるため、適切なバランスを保つことが重要です。
3.3 脂肪
「脂肪」は馬にとってエネルギー源として役立ちます。食事から摂取した脂肪は代謝され、エネルギーに変換されます。馬の食事には、一般的に人間の食事よりも脂肪が少ない傾向がありますが、脂肪は炭水化物の代替物として機能し、炭水化物の節約に寄与します。特にマメ科植物には脂肪が豊富に含まれており、馬のエネルギー需要をサポートし、バランスの取れた食事に貢献します。
3.4 ミネラル
「ミネラル」は、体の組織形成や骨を強くするのに必要な栄養です。アルファルファや塩から摂取することができます。夏バテ防止にもなるため、餌箱に固形塩を入れたり餌に塩の粉を混ぜ与えることもあります。
4.馬の飼料
馬の飼料は、大別すると以下の種類からなります。
(1)濃厚飼料:穀物など
(2)粗飼料 :乾草など
(3)補助飼料:油粕類など
(4)加工飼料:ペレットなどの人工的な飼料
(5)添加飼料:ビタミン、ミネラルなどの粉末、液
4.1 主な濃厚飼料
①えん麦
えん麦は高繊維・低デンプン・豊富な脂質で、消化性も優れ、主産地はカナダとオーストラリアです。
えん麦をさらに消化性を高めるために圧ペン加工した飼料もあります。
②ふすま
ふすまは、小麦のぬかのことで食物繊維が豊富に含まれ整腸作用があります。
ただし、リンが含まれることから多給は禁物です。
③とうもろこし
とうもろこしは、高脂肪でエネルギーが豊富ですが、繊維が少なく、小腸での消化が難しい特性があるため、過剰摂取は避けるべきです。
4.2 主な粗飼料
①イネ科の乾草
イネ科の牧草を乾燥させたもので、日本では、1年中均質の栄養価のあるチモシー草種が使われることが多い。
②アルファルファ
タンパク質、カルシウムなどの栄養価が多く含まれているという特徴です。馬の体、特に歯や骨に必要なミネラルも豊富に含んでいます。
ヘイキューブにして与えることが多いです。
※ヘイキューブ:アルファルファを刈り取った後に乾燥させて、キューブ状に圧縮成型して立方体の形に固めたもの。
③サイレージ
サイレージは、高温発酵させて圧縮した乾草のことで、水分を60%程度に減らした牧草をロールにして微生物のよる発酵により作ります。
4.3 主な補助飼料
タンパク質の補強として油粕類が多く使われます。
4.4 加工飼料
馬の加工飼料は人工的に栄養バランスを考慮し製造され、ペレット飼料や穀類配合飼料に糖蜜を混合させたスイートフードなどがあります。これらは栄養のバランスが優れ、栄養の給与を計算できる利点があります。
4.5 添加飼料
ミネラルやビタミンなどの不足分を添加物で補うためのもので、主な添加物としては、カルシウムや食塩、脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンなどがあります。
5.馬のおやつ
5.1 食べて良いもの
※りんごは、喉に詰まらないように、芯や種を取り除いて一口大にカットしてあげましょう。
ニンジンも、喉に詰まらないように、一口大にカットするかスティック状にカットしてあげましょう。
バナナは、農薬が残っている可能性もあるので、皮はあげないほうがよいでしょう。
5.2 食べて悪いもの
種類 | コメント |
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トマト、ナス、ジャガイモ、ピーマン、ししとう等 | トマトなどのナス科植物は与えてはいけません。アルカロイドが含まれ、疝痛や下痢の原因となります。 |
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、ビーツ、小松菜、ダイコン等 | キャベツなどのアブラナ科植物を与えてはいけません。ガス溜まりやすく、疝痛の原因となります。 |
ニンニク(特に生はNG)、玉ねぎなどのネギ類 | 生のニンニクや玉ねぎなどのネギ類は貧血の原因となります。 ※体調改善を目的とする場合、少量のニンニクを与える際は専門の獣医や専門家に相談してください。 |
チョコレート、ココア、ガラナ、茶 | 原料であるカカオに含まれるデオブロミンは有毒で、馬の興奮や錯覚を引き起こす可能性があります。 競馬や馬術競技などでデオブロミンは禁止されており、厳重に注意が必要です。 |
アボカド | 大量に摂取すると、疝痛、心拍や呼吸異常などの原因となります。 |
柿 | 摂取すると、疝痛の原因となります。 |
5.おわりに
馬の飼料選びと栄養管理は、彼らの健康とパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
この記事では馬の食事に関する基本を紹介しましたが、馬は一頭一頭異なる個体であり、それぞれの体調や状況(競技会に合わせ食事など)に応じた食事プランが必要です。
栄養バランスを考慮し、食べてはいけないものと適切なものを見極め、おやつの提供にも気を配ることが、馬との共に過ごす素晴らしい時間を築く鍵だと考えます。
愛情と適切なケアを通じて、馬との絆をより深めましょう。
※本記事の参考文献
・馬術情報誌 No.681 2019年10月「愛馬 のための カイバ道場 Vol.28」
・「馬の飼養管理について」作成者:馬事公苑診療所 松田芳和 久代明日香
kaiyou.pdf (jra.jp)
おすすめの馬用おやつ
以下に3種類のおやつを紹介します。
これらのおやつは硬めに作られてでいるのでポケットに入れても割れにくく、粉で手が汚れることも少ないです。
①HIPPO-TONIC ホーストリート-ペレットタイプ
嗜好性の高い馬用スナック。 フランス製の硬すぎないクッキータイプで食べやすいおやつです。 アップル、キャロット、バナナ、ストロベリー、ラズベリー、ペア&グレープ、バナナ&キャロット、フルーツ&ベジタブル。8つのフレーバーあります。
②EQULIBERTA 馬のおやつ ナチュラルホーストリーツ
安全・安心を考えて国内産にこだわったナチュラルな馬のおやつで改良を重ねて、馬が好むサイズや硬さに調整したクッキーです。アルファルファ、トウモロコシ、りんごなどが含まれています。
③Likit ホースクッキー
イギリス製のサクサクの歯ごたえで嗜好性の高いおやつです。
レインボー、 アップル&シナモン, ミント&ユーカリの3種類フレーバーあります。