1.はじめに
「馬」という漢字を含む四字熟語はたくさんあります。例えば、「竹馬之友」や「馬耳東風」といった言葉があります。
このような四字熟語には、馬にまつわるさまざまな意味が込められています。
馬は古代から人間とともに生活し、戦争や交通手段などに欠かせない存在でした。
そこから、人間の性格や行動、出来事などを表現する言葉としても広く使われています。
この記事では、馬を含む四字熟語の意味や使われ方について紹介しています。
2.【馬】を含む四字熟語って
2.1 意馬心猿(いばしんえん)
馬と猿を使って、心が乱れることを表現した四字熟語です。
走り回る馬や、騒ぎ立てる猿のよに落ち着かないこと、煩悩や欲情を抑えかねて心が混乱することに使われます。
例えば、物事を客観的に判断できず、感情に振り回されて行動することがある場合に用いられます。
2.2 牛飲馬食(ぎゅういんばしょく)
牛のように大量に飲み、馬のように大量に食べることを表現した四字熟語です。
人間が過剰に飲食することをたとえて使われます。
つまり、自制心がなく、欲望に任せて飲食することを批判するために使われます。
2.3 胡馬北風(こばほくふう)
北方から吹く寒い風を受けて、遠くの故郷を懐かしむ胡(こ)族の馬をした表現した言葉から来ています。
この四字熟語は、遠く離れた故郷や出身地を思う気持ちを表しています。
風景や人々、文化などが変化しても、自分が育った土地やその地に対する思い出が、いつまでも心に残るという意味もあります。
【参考】「胡馬」とは、昔の中国で北方の胡国で生まれた馬のことです。
胡馬は、故郷を離れても北風が吹くとその方向に身を寄せ、懐かしむといわれています。
2.4 塞翁之馬(さいおうのうま)
中国の古典に登場する話から生まれたことわざで、「幸か不幸か、あらかじめわからないものだ」という意味を表現しています。
【補足】昔、中国の辺境の塞(とりで)に住む老翁が胡(こ)の国へ逃げてしまった。
数か月後、その馬は胡国の駿馬(しゅんめ)を連れて帰ってきた。
塞翁の息子はその駿馬を好んで乗ったが、落馬して負傷してしまった。
やがて胡の国との間で戦争が起こり若者たちが大勢戦死した。
しかし塞翁の息子は怪我のおかげで徴兵を免れ、親子共に生き残ったという故事による。
出典は「淮南子(えなんじ)」
2.5 寸馬豆人(すんばとうじん)
「寸馬豆人」は、寸法の小さい馬や人のことを表現した言葉です。
遠くから見た人や馬が、大きさが小さく見えることから、比喩的に、大した実力や能力を持っていない人を指すこともあります。
また、絵画や写真などの遠景に描かれる人物や動物が小さく描かれることから、芸術作品において、小さな人物や動物を描いた部分を指すこともあります。
2.6 千軍万馬(せんぐんばんば)
多数の兵士や兵馬がいる様子を表現した言葉です。
戦争などで使われることが多く、敵味方を問わず、大勢の軍勢が集結している様子を表します。
また、この言葉は、苦難や試練を経験して強く生き残る人物を指すこともあります。
一方で、ある分野について経験が豊富であることを表現する場合もあります。
【参考】出典「南史」陳慶之伝(ちんけいしでん)
2.7 竹馬之友(ちくばのとも)
幼い頃に、竹馬の乗って一緒に遊んだ仲の良い友人のことを表現した言葉です。
幼友達。
竹馬の遊びを通じて、一緒に遊んだ友人とは深い絆ができることがあります。
そのため、「竹馬の友」という言葉は、幼い頃に遊んで仲良くなった友人のことを表すことわざとして使われます。
また、「竹馬の友」とは、幼少期の友情は永遠に続くという意味も含まれています。
【補足】「竹馬」は、古くは笹竹を適当な長さに切りとり、馬に見立てて股にはさみ、走り回る遊びのことをいいます。また、足がかりのある二本の竹に乗って歩く遊びのこともいいます。
2.8 天高肥馬(てんこうひば)
秋の収穫の季節になると、天気が良く空が高く、馬も肥えるので、出陣するには絶好の季節であるという意味を表現しています。
また、一般的には、物事が順調で、好条件の状況にあることを表す表現としても使われます。
【補足】昔、中国では、北方の騎馬民族の匈奴が収穫の秋になると大挙して略奪にやってきたので、前漢の趙充国はそれを見抜き、「馬が肥ゆる秋には必ず事変が起きる、今年もその季節がやってきた」と、警戒の言葉として言った。
匈奴が滅びた後は、現在の「秋は空気も澄んでいて、空も高く感じられ、馬も肥えるような収穫の季節でもある。」意味で使われるようになった。
2.9 駑馬十駕(どばじゅうば)
才能に乏しい馬でも、10人の騎手を交代で駆使すれば優秀な馬と同じように走らせることができるということから、努力によって能力を充実させることができるということを表現した言葉です。
つまり、才能がなくても粘り強く努力すれば成功することができるということが含まれています。
【補足】元の意味は「鈍い馬でも10日走れば優れた馬の1日分と同じくらいは走ることができる」。荀子に由来する故事成語。
2.10 南船北馬(なんせんほくば)
南方と北方で異なる交通手段を使うことから、広く旅をすることを表現した四字熟語です。
この言葉は、一般には多忙な生活を送る人を表現するために使われます。
また、人生の旅路において、いろいろな場所を訪れ、様々な経験を積んで成長することも意味します。
【補足】中国南部の川や運河が多い地方では交通手段に船を使い、山や平原が多い北部では馬での旅が多いことを四字熟語にしてます。
2.11 伯楽一顧(はくらくのいっこ)
「伯楽一顧」という四字熟語は、中国の春秋戦国時代に活躍した名馬調教師・伯楽の逸話から来ています。
ある時、伯楽が名馬の才能を見抜いていたところ、有力者である趙国の君主が通りかかり、その馬を見ることになりました。
伯楽はこの機会に有能な弟子を推薦し、その弟子が見事な技術を見せて君主に認められ、出世したという話です。
このように、一度有力者に目をかけられることで、評価が高まったり、出世したりすることを「伯楽一顧」と表現するようになりました。
【参考】「伯楽」は馬の勘定の名人。
その人が市で,一頭の馬を振り返って見ただけで、その馬の値段が高騰したという故事からきています。
※出典「戦国策」燕策(えんさく)
2.12 馬耳東風(ばじとうふう)
馬が耳を東に向けているように、他人の言葉を聞いても、まるで風が吹いているように聞こえるということから、相手の言葉に全く耳を傾けないことを表現した言葉です。
相手が言っていることに興味がない、あるいは自分の意見を固定しているため、他人の意見を聞かない、取り入れない態度を表します。
※出典「李白の詩」
2.13 白駒過隙(はっくかげき)
元々は、馬の白い体毛が隙間から通り抜けるほどのわずかな時間を指していました。
この短い時間があっという間に過ぎ去ってしまうように、人生も短いという意味合いが含まれています。
2.14 駿馬飛躍(しゅんばひやく)
非凡な能力を持つ優れた馬の力強い飛躍を表現しています。
比喩的に、優れた人材が大きな飛躍を遂げることを意味します。
2.15 万馬奔騰(ばんばほんとう)
馬が一斉に走り出す様子を表現した四字熟語です。
比喩的に、大勢の人や物が一斉に動き出す様子を表します。
3.【馬】を含む三字熟語って
3.1 下馬評
直接関係のない人による勝手な批評、世間の評判を表現した言葉です。
【補足】特にスポーツや芸能などの競技や競争において、素人や専門家などからの予想や評価を指して用いられる言葉です。
つまり、直接関係のない人がその競技や競争に対して勝手な評価をすることを意味し、世間の評判を示す場合にも使われます。
【参考】「下馬評」は、下馬先で供の者が主人を待つ間に噂し会ったことから始まったとされます。
3.2 千里眼(せんりがん)
遠くのものを見通す力や、将来のことや人の心の奥底などを見抜く能力を表現した言葉です。
つまり、視力や直感力、洞察力、予知能力などが優れている人を表現するために用いられます。
このような能力を持った人は、仕事やプライベートの場面で、周囲の人々に対して的確なアドバイスを与えたり、問題を解決したりすることができます。
ただし、自信過剰や傲慢さに陥り、周囲の人々から避けられることもあるため、注意が必要です。
洞察力のこと。
【参考】「千里」は約4Km。
3.3 走馬灯(そうまとう)
ある事象や場面を連想させるさまざまなイメージが、次々に頭の中を駆け巡ることを表現する言葉です。
もともとは、中にろうそくを置いた回転する灯籠(とうろう)に影を映し出して楽しむ昔の遊びが由来とされます。
現代では、人生の中での様々な経験や出来事が、一瞬にして頭の中を駆け巡る状態を表現するために用いられます。
また、過去の出来事を振り返るときや、未来の展望を思い描くときにも用いられることがあります。
【参考】「走馬灯のように」というかたちで、過ぎ去った昔のことが次々に思い出す場合に使います。
4.おわりに
馬の文字を含む四字熟語には、多くの意味や使われ方があります。
これらの四字熟語は、様々な場面で使われ、豊かな表現力を持っています。馬の文字を含む四字熟語を知っておくことで、文章や話し言葉の表現力を豊かにすることができます。
※本記事の参考文献
小峰和明監修「四字熟語」辞典、高橋書店出版