1.はじめに
障害馬術は、障害物を飛び越える馬術競技のことで、設置された様々な障害を決められた順番に飛越していき、制限時間内に失敗なく正しく障害を飛越してゴールすることを競う競技のことです。
障害馬術では、馬が障害物を飛越する際に人馬が一体となって動くため、人馬の信頼関係がとても重要な役割を果たします。
当記事では、障害馬術についての基本知識についてまとめてます。
2.乗馬における障害飛越について
2.1 騎手と馬の役割
・馬の役割:障害を飛越すること
・騎手の役割:馬を誘導し的確にアプローチして、馬が障害を飛びやすいようにサポートすること
馬は障害の飛ぶ順番や障害物の種類を覚えることはできません。
騎手が予めコース(経路)を下見し、障害の飛ぶ順番や障害物の種類、的確な走行経路等を確認し覚えます。
騎手が馬を誘導し的確に障害物に対しアプローチしていく、馬が障害を飛びやすいようにサポートすることが騎手の役割となります。
2.2 障害飛越の動き
障害飛越の動きは、以下の5段階に分けられます。
着地の時、騎手は上体を軽く起こし、騎手のお尻が馬の背中に強く当たらないように注意します。
2.3 障害飛越の基本姿勢
障害馬術には、以下の2つの基本姿勢があります。
・2ポイントシート
・3ポイントシート
走行中にこの2つ基本姿勢を使い分け、馬をコントロールし障害物に対しアプローチしていきます。
2.31 2ポイントシート
速いペースで走行したり、障害を飛越する際にとるのが2ポイントシートです。
騎手は馬の背中に立つような姿勢を取ります。
騎手は、軽くお尻を浮かせ、上体を少し前に倒し、ふくらはぎを中心に両足の2点でバランスをとります。
バランスが前に行かないように、お尻を後ろに突き出すようなイメージで乗ります。
2.32 3ポイントシート
ゆっくりのペースで走行したり、ブレーキをかける時にとるのが3ポイントシートです。
騎手が馬に乗った際に、身体をしっかりと支えるために用いる3つのポイントのことです。
左右のふくらはぎとお尻の3点でバランスをとります。
馬場馬術のように鞍に深く座るのではなく、両鐙にもしっかりと体重をかけて乗ります。
3 障害物の主な種類
障害馬術競技では、コース上に、垂直障害、オクサー障害、水壕障害など様々な障害物が配置されています。障害物の種類や高さや幅、配置などは、競技クラスやレベルに応じて異なります。
障害物は、競技の重要な要素であり、騎手と馬の技術や協調性が試される場となっています。
ここでは、主な障害物の種類について、まとめてます。
3.1 クロスバー
クロスバーは、馬場上に設置された二本の柱に対して、横木を交差させた形状の障害物のことをいいます。
中央が低くなっており、馬が障害の真ん中を飛越するようにさせます。
練習障害の様な役割の障害です。
3.2 垂直障害
垂直障害は、馬場に立てられた垂直の柱状の障害物のことをいいます。
高さだけで奥行きはありません。
2021年の東京オリンピックの障害馬術競技の障害の高さは最大で165㎝、全日本障害馬術選手権で最大で150㎝とかなり高さのある障害を馬が飛越することになります。
3.3 幅障害(オクサー障害)
高さと奥行のある障害のことを言います。
オクサー障害は、高さと奥行のある障害のことを言います。
オクサー障害には、前を低く後を高くした段差オクサーや前後を同じ高さにして平行オクサー等があります。
2021年の東京オリンピックの障害馬術競技ではオクサー障害の2本のバーの幅(奥行)は最大で200㎝(トリプルバーは220cm)、全日本障害馬術選手権では最大150㎝(トリプルバーは180cm)とかなり幅のある障害を馬が飛越することになります。
右の写真は、全日本障害馬術選手権の大障害Aのオクサー障害です。手入れしている方と比べても高く、奥行(幅)もあるのがわかります。
3.4 水壕障害
水壕障害は、馬場に設置された水がたまった溝を飛び越える障害物のことをいいます。
2021年の東京オリンピックの障害馬術競技の障害の水濠の奥行は最大で400cm、全日本障害馬術選手権で最大で350㎝とかなり幅のある障害を馬が飛越することになります。
3.5 その他の障害物
上記以外にも、障害物には「レンガ」、「リバプール」、「つい立て」、「横棒」、「竹柵」、「花壇」など色々な障害物が、垂直障害やオクサーと組み合わせて置かれることがあります。
3.6 コンビネーション障害
コンビネーション障害は、複数の障害を組み合わせて連続して飛ぶ障害のことです。
2つの障害を組み合わせたものはダブル障害、3つだとトリプル障害と言います。
コンビネーション障害のそれぞれの障害は、手前から、A, B, Cと呼びます。
障害間の距離は馬の駈歩が1歩か2歩で設定されています。
4.経路障害
経路障害は、コース上に8~12個程の障害物を設置し、決められたコースを通過し、番号順に障害を飛越する競技のことをいいます。
障害は飛越方向が定まっており、赤い旗を右手に、白い旗を左手に見て飛ぶ方向にしか通過を許されない。
番号、旗、簡単なルールを記述
5.その他
5.1 歩度(ストライド)
歩度は、馬のストライドのことをいいます。
完歩ともいいます。
(参考)1完歩は、4足歩行動物の歩幅のことを指す言葉です。なお、人間を含む2足歩行動物の歩幅は「一歩」です。
レース中の競走馬は、一完歩は7〜8mと言われている。
5.11 障害間の歩数の数え方
馬が障害を跳んで着地して、その後の駆歩の1歩目から数え始めます。着地は数に入りません。
数え方は、障害間が3歩の時は、「1、2、3 』 の 「3 」 で踏み切りに合うように数え、障害間が5歩の時なら 「 1、2、 1、2、3 」と数え、 6歩なら 「 1、2、3、 1、2、3 」と数え、7歩なら 「 1、 1、2、3、 1、2、3 」と数えます。
5.12 ストライド
馬は本来、馬体の大きさなどによって、理想となるストライドやペースが異なります。
障害馬術において、100㎝クラス以上のコースであれば、どの馬も3.5mのストライドと分速350m以上の速度で走行できることが求められます。
それは、競技会のコースがその値を基準にデザインされているからです。
3.5mのストライドと分速350mの速度で走行した場合、ノーマルな経路のストライドの目安は、以下のとおりです。
・1歩: 3.5m(3.6m)
・3歩:14.0m(14.0m)
・4歩:17.5m(18.0m)
・5歩:21.0m(21.5m)
・6歩:24.5m(25.0m)
※()内は、3.6mのストライドで走行した場合
5.3 障害の基本的なルール
以下のルールで行われる競技が多いです。
(1)失権となるケース
・馬の転倒または騎手の落馬した場合
・拒否して障害物を落下または転倒し、修復されなかったのにその障害を飛越した場合
・反対の方向から障害物を飛越した場合や順序を間違えて障害物を飛越した場合
・次の障害物を45秒以内に飛越しなかった場合
・出発の合図前に出発し、第1障害を超過した場合(ベル前スタート)
(2)減点となるケース
・障害物の落下または転倒した場合は、減点4
・2回馬が障害物を飛ぶ際に拒否、反抗、逃避した場合は、減点4
・着水(水濠障害で馬の脚が水につく)した場合は、減点4
6.おわりに
障害馬術は、人馬が一体となって障害物を飛び越える競技です。
人馬の信頼関係が重要であり、正確な障害飛越の技術が求められます。
本記事では、騎手と馬の役割、障害飛越の動き、障害の基本姿勢、主な障害物の種類、経路障害などについて解説しました。
障害馬術の基本知識を習得することで、競技への理解が深まり、より楽しめるでしょう。
また、障害馬術は人馬の協力と努力が重要な要素となっています。
人馬の絆を築きながら、障害飛越の魅力を追求していくことをお勧めします。
なお、「乗馬の障害競技の種類、ルール、競技の流れを解説」につきましては、以下の記事にて詳細を記載しておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら合わせてご覧ください。