1.はじめに
馬のことをよく理解するためには、馬の本能、性質や種類とともに、馬体についても知っておくことが大切です。
レッスンを受けている最中に、指導員の言葉の中には馬体の名称も頻繁に出てきますので、知っておくことは大切です。
馬体の名称には、体高と体長、トモ、キ甲、骨量、夜目、距毛、つなぎ、飛節、鼻孔などがあります。さらに、毛色や白斑、蹄の構造も理解しておくと役立ちます。
馬体の名称を知ることで、馬の構造や特徴をより深く理解し、乗馬や馬との関わりを楽しむことができます。
2.馬体の名称
馬体とは、馬の体のことをいい、下の絵は馬体の主な名称となります。
馬体は、大きく分けると、前躯、中躯、後躯からなります。
2.1 体高と体長
体高:馬の背の高さのことで、キ甲から地面までの長さをいいます。
体長:胴の長さのことで、胸前から尻端までの長さのことをいいます。
2.2 トモ
馬体を前躯、中躯、後躯に分けたときの後躯のことをトモ(後)といいます。
※競馬で「トモの張りがいい」というのは、後躯である腰や臀部、後肢あたりが充実していることをいいます。
2.3 キ甲
キ甲とは、馬の首と背の境にある、膨らんだ部分のことです。
幼少の頃は目立ちませんが、成長するにつれて突出し、腰の線よりも高くなってきます。
このことを「キ甲が抜ける」といいます。
2.4 骨量(こつりょう)
骨格のつくりや骨の太さのことをいいます。
※競馬では、太くて頑丈な骨組みの馬のことを、「骨量が豊かだ」などといいます。
2.5 夜目(よめ)
前後左右の脚の内側にある角質のような部分のことで、正式な学名とは附蝉(ふぜん)といいます。
夜目は、5本の指のうち、拇指〔おやゆび〕が退化した痕跡だともいわれています。
その形や表面の模様などが馬ごとにことなることから、個体鑑別の材料に用いている国もあります。
2.6 距毛(きょもう)
球節の後ろの下部に生えている毛を距毛と呼びます。
この体毛に覆われた中には5ミリメートル程度の小さな角質がついていて、これを距と呼びます。
この距は進化の過程で消失した指の痕跡とする説や、足の裏の肉球が退化したとする説もあります。
2.7 つなぎ
脚の球節から蹄の間の部分のことです。
常歩や駈足をして体重がかかると、つなぎの部分の傾きはクッションの働きをして、脚や蹄にかかる衝撃をやわらげます。
普通に立っているときは、45度程度にかたむいています。
つなぎが短く傾きが浅いと十分吸収できず、クッションの効果は薄れます。競馬では、一般的には脚への負担の大きい芝には不向きと言われ、短いつなぎによりコンパクトに蹴りを繰り出せるので砂に足をとられず効率的には走れるダートへ向いていると言われます。
2.8 飛節(ひせつ)
飛節は、馬の後肢の大きく屈曲した部分で、人間の足首にあたります。
飛節は、馬体の推進時にテコの役割を担い、後駆の中でも重要な部分です。
2.9 鼻孔(びこう)
鼻孔は、馬の鼻の穴のことす。
馬は、鼻だけで呼吸をします。
3.毛色
毛色については、サラブレットの場合は基本的には7種類(栗毛、栃栗毛、鹿毛、黒鹿毛、青毛、青鹿毛、芦毛)といわれ、これらに加えまれに白毛が生まれます。
以下の表は、馬の毛色の主な名称と概要となります。
なお、馬の被毛は、全身を覆っている短い毛(「短毛」という。)とまえがみ、たてがみ、尾などの長い毛(「長毛」という。)に区別されてます。
名称 | 読み | 概要 |
栗毛 | くりげ | 短毛全体が黄褐色で、長毛は茶褐色や白色に近い馬もいます。 |
栃栗毛 | とちくりげ | 全体が黒味がかった褐色(チョコレート色)です。まれに、長毛は黒色に近いものから白色に近い馬もいます。 |
鹿毛 | かげ | 全体が赤褐色です。栗毛との違いは、4本の脚先が黒で、長毛も黒色であることです。 |
黒鹿毛 | くろかげ | 全体が黒っぽい褐色で、目や鼻の周り、腋(わき)、ひばら、下腹、内股のあたりに褐色が見られます。4本の脚先が黒で、長毛も黒色です。 |
青毛 | あおげ |
長毛も含め、全身の毛が完全に黒色です。 |
青鹿毛 | あおかげ | 全体がほぼ黒色で、青毛に見えますが、目や鼻の周りや腋(わき)、ひばらなどにわずかに褐色が見えます。長毛は、黒色です。 |
芦毛 | あしげ | もともとの毛色(「原毛色」という)は、栗毛、鹿毛、青鹿毛などですが、被毛全体に白色毛が混じります。 生まれたときは、灰色や黒、または母親と同じ毛色であったりしますが、年を重ねるごとに白くなっていくのが特徴です。 |
白毛 | しろげ | 生まれたときから全身がほとんど白色で、被毛は全体がほとんど白色で皮膚はピンク色です。白毛は白毛の遺伝子を持った親馬から生まれるため、この遺伝子を持つ馬は少ないことより頭数は少なく希少な存在とされています。 |
駁毛 | ぶちげ |
地毛が白く、それに濃色の円形の小斑(ぶち)模様がある毛色です。 |
(参考)栗毛の法則、芦毛の法則
両親が栗毛の場合には、栗毛の馬しか生まれないことを「栗毛の法則」といいます。
両親のどちらかが芦毛の場合しか、芦毛が生まれないことを「芦毛の法則」といいます。
(参考)駁毛
4.白斑(はくはん)
白の他の毛色の中に斑状にあらわれる白い毛色のことで、駁毛(ぶちげ)以外の場合は、主に頭部や脚にあらわれます。
4.1 頭部の白斑
脚部の白斑
蹄の上にある白斑で、幅は全周に及ぶ箇所があり、長さは管の半ばに達していません。 | |
蹄の上にある白斑で、幅は半周以上で全周に及ぶばず、長さは管の半ばに達していません。 | |
下肢の白斑で、幅は全周に及ぶ箇所があり長さは管の半ば以上に達してます。 | |
下肢の白斑で、幅は半周以上で全周に及ぶばず、長さは管の半ば以上に達してます。 |
(参考例)
5.蹄(ひづめ)
蹄は、角質でできた円筒型の肢端を傷つけない保護の役割りを担ってます。
人の中指の先端に相当するといわれてます。
下の絵は蹄の主な名称となります。
6.馬体の名称(詳細)
7.おわりに
馬体の名称を覚えることで、馬の構造や特徴を深く理解し、乗馬や競馬、馬との関わりを楽しむことができます。
体高と体長、トモ、キ甲、骨量、夜目、距毛、つなぎ、飛節、鼻孔など、これらの言葉を知ることで馬の身体の部分がイメージしやすくなります。
また、毛色や白斑、蹄の構造も興味深い要素です。
馬の本能や性質とともに馬体についても学ぶことで、馬とのコミュニケーションがより豊かになります。
乗馬や競馬、馬との楽しみも広がるでしょう。